lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

失敗の本質 戦場のリーダーシップ篇

先日記事にした『失敗の本質―日本軍の組織論的研究―』の隣(続編として)に書架に並んでいたので一緒に借り出して読んでみました。
第一弾の方が、書籍としては読み応えがあると思います。
この第二弾は「リーダーシップ篇」と題している通り、「ぼくのかんがえるりーだーしっぷ」的なところが多く、いいこと言ってるのだけど、ちょっと抽象的で私にはあんまり面白くないなあと思いつつある中で、石原莞爾についての記述と、「空気」(by山本七平)の発生メカニズムについての考察が読めたのが収穫でした。
石原莞爾については、なんか独断専行した変な人というイメージ(→ごめんなさい)だったのが、天才的な一面も持つということで、一度本人の著書を読んでみたくなりました。
もうひとつ、「空気」については、山本の原著を読んだとき、いやまあお書きになられていることはもっともでしょうが、その空気はそもそも何なのか、さっぱり分かりません(lionusの読解力不足なのかもだけど)と、思った*1ことが、なるほど〜と解けたような気がしました。
少々長くなりますが引用します。

p.263
本項では、オリバー・E・ウィリアムソンの取引コスト理論を用いて、〈大和〉特攻作戦を分析し、どのように空気が発生するのか、その合理的なメカニズムを明らかにしたい。

pp.270-271
ウィリアムソンによれば、すべての人間は完全に合理的でなく、また完全に非合理的でもなく、限られた情報のなかで限定合理的に行動すると仮定される。また、人間は機会があれば相手のスキにつけ込み、利己的利益を追求する機会主義的存在でもあるとする。
このように限定合理的で機会主義的な人間同士が自由に取引する場合、互いに相手を警戒し、駆け引きする。それゆえ、人間の交渉・取引には、さまざまな駆け引きに伴う多大な無駄が発生する。この無駄が取引コストである。

p.271
このコストは会計上に表れないコストであり、この意味で見えないコストである。しかし、これが人間を不条理に導くのだ。

pp.271-272
組織にとって、もし不正を公表することに伴うこの人間関係上の取引コストがあまりにも大きければ、公表することによって得られるメリットを差し引いても、不正を隠し続けたほうが特になる場合もある。
この場合、組織にとって社会的合理性と組織の個別合理性は不一致となり、人間は、個別合理性を追求したほうが得との判断の下に、不正の隠蔽を選択する。この計算合理性が、組織を不条理に導くことになる
この時、組織のメンバーの行動は反社会的となる。彼らはそれを自覚しているので、自分たちの行動の正当性を公言できず、沈黙せざるをえなくなる。やましき沈黙。これが「空気」発生のメカニズムである。

*1:この日記に書いたような気がするのですが、検索しても出てこないので、読んだだけで書かなかったのかもしれません。