金融機関マネジメント
- 作者: 川本裕子
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2015/03/27
- メディア: 単行本
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こちらは早稲田大学大学院ファイナンス研究科での教科書らしく、銀行を中心とした金融機関マネジメントに関する事柄を広く浅く押さえているような印象で、著者ご本人の”主張”はあっさり目な感じでした。
でもいくつか面白いところもありました。
p.157
日本の金融機関の特徴の大きなものは、官庁と並んで年功序列システムによる「年齢の支配」です。中央官庁の場合には、同期で入る人数がそれほど多くなく、入省時に資格によってキャリアトラックがある程度決まっていますが、金融機関の場合には時に数百人という人数が「入社年次」が同じ、として一つのグループでくくられ、人事管理上、ずっとその番号(年次)で管理されます。製造業の場合には技術職、営業職、管理企画職と業種分けが多く、別の課題はあるにせよ、金融機関のように同じ職種として扱われていることは少ないといえます。
ぎょえ〜。入社年次=製造年月日で一律管理される食品製造物みたいな・・・
『銀行収益革命』でも銀行業務の多くはオペレーショナルな部分が多い、という指摘はありましたが、本書でも同じことが書かれています。
pp.165-166
もちろん、経営幹部層のみならず、銀行の多くの部門がオペレーショナルな仕事で成り立っているわけですから、製造業の工場的な人材管理やサービス業での人材育成が大編参考になるかもしれません。
銀行の多くの業務はオペレーショナル→高学歴大卒者をメインに大量採用するのは果たして効率的なのか?と考えさせられます。
先の入社年次で輪切りのガチガチ年功序列管理を考え合わせると、壮大な人材資源の無駄遣いをしている可能性はないか?とも。
コンプライアンスについても、サクっと整理されていて気持ちがいいです。
p.191
「不祥事を捉える視点」として、報道記事などで「コンプライアンスよりも収益追求を優先した」「収益至上主義の弊害」といった文言を見ることが多いですが、こうした問題の捉え方は適切でしょうか。
「コンプライアンスよりも収益追求を優先した」ということは、「企業の存続を危機にさらしながら、目前の利益額を増やすことに傾注した」という方がより正確であり、「収益至上主義の弊害」は少なくとも「『短期』収益至上主義の弊害」というべきです。
企業の持続性のためにはコンプライアンスと営業推進は車の両輪といえるので、「収益を追わない」ことで問題が解決するわけではなく、「企業の存続を危機にさらしている」ことをいかに解決するかが重要です。