清沢洌
- 作者: 北岡伸一
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2004/07/01
- メディア: 新書
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pp.208-209
清沢のリアリスティックな外交評論の根底にあったのは、国際関係の基礎は経済力であり、政治的・軍事的な力の果たす役割は二次的であるという考えであった。サイパンが陥落した時、玉砕や撤退をせずに現地に居残ることにより、日本の経済勢力の確保をはかるべきだったと考えたように、政治の極限たる戦争や敗戦のなお彼方に、より根源的な経済力が存在することを理解していた。それゆえ外国との関係は政治的・軍事的関係である前に、まず経済関係であった。外国は、脅威である前にまず顧客であった。分裂した弱い中国よりも、統一された豊かな中国の方が日本にとって望ましく、中国よりもアメリカの方が重要なのはそのためであった。
そして一国の経済力は、清沢によれば、資源でも資本でもなく、その国民が勤勉に生産するかどうかにまずかかっていた。政治的な力は、決してこれに代わることは出来なかった。どれほど政治的な保護を加えても日本の満州経営の成功は難しく、またどれほど政治的に混乱していても中国の将来は明るいと考えたのはそのためであった。以上のように経済力を政治力に優先させ、経済力の要素として民衆の勤勉を最も重視した背景には、彼の移民経験があったことは何度も指摘した通りである。
まずご飯がちゃんと食べられなければ始まりませんな。
そしてその国民に対する教育が大切。