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情報法コンプライアンスと内部統制 第2版

情報法コンプライアンスと内部統制 第2版 企業法学からみた経営者の責務

情報法コンプライアンスと内部統制 第2版 企業法学からみた経営者の責務

著者の高野先生は,ベネッセの法務部門におられ,その後大学教授に転身された方です。本書は,中央大学に提出された博士論文に加筆されたものだそうです。
図書館から借り出した時はそんなことは意識していなかったので,図らずもタイムリーな読書になってしまいました*1
そのことは置いておいて,実務をされていた方ならではの,コンプライアンス体制の確立に関する主張は非常に参考になりました。

pp.14-15
企業組織に自浄機能・自己牽制機能を求める現代の社会システムに対応するためには,自社は無論のこと,コンプライアンス(法令遵守)を目的として企業グループ全体を統制する仕組み(以下「内部統制システム」という。)を設計し,これを運用するための機能,専門組織が必要であろう。
本章において著者は,わが国の企業法務は,「臨床法務」,「予防法務」および「戦略法務」の各機能を有する従来の法務部門とは別に,「内部統制適合的法務」機能を有する第二法務部門を新設する必要性を主張したい。
「内部統制適合的法務」は,著者のアイディアをもとに,堀部政男一橋大学名誉教授(前中央大学教授)が表現した言葉であり,本書において新たに主張する法務機能の概念である。
その定義は,企業集団が,業務の執行において,適法性を確保するための,自浄または自己牽制を目的とする内部統制システムの構想,構築,運用,および見直しの一連の業務を遂行する機能であり,その目的は企業集団における経営執行の適法性確保および従業者の業務遂行における適法性確保である。

なお本書の初版は,日本リスクマネジメント学会優秀著作賞を受賞したそうです。

*1:著者先生は現在関西大学教授でらっしゃるので,今回の個人情報漏えいには直接関わる立場ではありませんが,情報法コンプライアンスの論文で学位をとられた方のかつての勤務先が,大規模情報漏えいで世間を騒がせることになるとは,なんとも皮肉な話です。一旦はきちんとしたコンプライアンス体制を確立した?としても,その後のメンテナンスが上手になされていなかったら,数年でこーいうことになる,という教訓になるのでしょうか・・・