人と動物の日本史1 動物の考古学。
今まで書名を記事タイトルにすることはあえて避けていたのですが,日記検索がしづらいと気が付いたので,書名をタイトルにすることにしました。
4冊シリーズの1冊目です。
- 作者: 西本豊弘
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2008/11/01
- メディア: 単行本
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「家畜を食べることを当然とする西欧的動物観とは大きく異なる(p.79)」,「家畜を飼育しながら食肉としては表向き利用しないという奇妙な動物観(p.79)」が形成された背景として,仏教云々とかを別として,エネルギー効率という観点からの検討と考察は新鮮でした。
p.175
日本の自然環境では食肉の生産はエネルギーの損失が大きい。功利主義的な立場に立てば,肉食の禁忌は,本来畜産に向かない日本の自然環境の中で,食糧資源をもっとも有効に利用するため,栽培植物を家畜の餌に回すことなく人が直接摂取するためのものだったと解釈できるかもしれない。
p.175
すなわち肉は食べない方が効率がよいという合理的判断が,肉は食べてはいけないというタブーに置き換わったとも説明できる。
p.175
古代以降,近世にいたるまで,その時々の政権が肉食を禁じ,表向きそれが千年を超えて維持されたのは,仏教的罪悪感や穢れといった意味体系と,日本の生態環境で肉食生産を行うことの非効率性とが合致した結果であった。