lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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組織不祥事研究(同一著者による本とは思えないほど、文体が違う。)

2月11日の記事で書いた

この本の著者である樋口先生がまとめられたD論が本になったものを読みました。
組織不祥事研究

組織不祥事研究

前者は新書らしく、読み易くかつ明快でポイントを押さえた書き方をされている印象でしたが、D論がもとになった後者は、まあなんと堅実というかカチコチの書き方で、非常にディフェンシブで同一人物とは思えない違いに面食らいました。
樋口先生は2006年4月にDコースに入学して以来、「最終的には6年もの月日を費やし」てD論をまとめられたと「まえがき」に書かれています。この入学当時もすでに何冊かご本を書かれていた上、組織のリスク管理や危機管理について講演を行なうほどの方であるにも関わらず、「当初は研究論文の基本的ルールさえも知らず、思い返しても赤面するより他にない」と書かれていて、一般書と研究論文の”文法”の違いに苦労されたことが窺えます。
内容は非常にオリジナルかつ緻密なご研究とお見受けしました。
組織の不祥事が起こると、その原因や背景について分析する記事や論文は出てきます。しかし、それぞれの事例を個別に分析するにとどまっているものが多く、多数(複数)事例の分析から何らかの法則や統合的知見を導出する試みはあまりないのではないでしょうか。
本書では、企業アンケート調査の量的分析と各種組織不祥事の質的分析の合わせ技から、経営学的立場からの組織不祥事の研究をまとめています。
経営学的立場から、とさらっと書きましたが、その内訳は成果主義や組織文化など経営学の複数のトピックを含んでおり、それらの先行研究を一通り押さえた上での多角的な分析には感銘を受けました。