lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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人事部は見ている。/出世するなら会社法(見ているけどコワくはない(と思う)。)

人事部は見ている。 日経プレミアシリーズ

人事部は見ている。 日経プレミアシリーズ

タイトルはドキッとしますが、人事経験者が淡々と、自身の意見も交えながら書いている本です。
奇抜な内容ではありませんが、「人事」に携わった経験のない立場からみると、へえ〜と思えるポイントがいくつか出てきます。
例えば、

  • 人事部の機能は担当する社員数に規定される

p.71
対象とする社員数の違いによって人事の機能が異なることを感じてきた。
まず,3000名を超えると各社員の顔つきは頭には浮かばない。取り組む仕事も人事部内の一部の役割を持つにすぎない。
ところが,100名程度のように少ない人員が対象の人事課長であれば,採用から,異動・考課,研修,労働条件,はては退職時の面談まですべてを担当する。

p.73
私の経験でいえば,担当する社員の顔を知り,かつある程度の行動予測ができるのは,最大でも300が限度である。

pp.73-74
もちろんここで重要なのは,把握できる人数が300名かどうかではなく,これくらいの人数を超えると,人間同士が対面して情報交換できる範囲を超えてしまうということである。仲間意識や連帯感というものが形成できなくなると言ったほうがいいかもしれない。

対面コミュニケーション=生身により限界が設定されるのですね。

p.74
人が連帯するためには,互いの人柄と置かれている立場を知っておかなければならない。

p.74
この人数以下であれば,相互に人物把握や行動予測ができるので,仕事においても例外的な対応や特別な取り扱いも可能である。しかしそれを超えると情報伝達も文書や所属長会議を通じた間接的なものになり,情報収集も伝聞情報で把握せざるをえなくなる。結果として,一律運用,杓子定規が中心になる。

この、把握できる人数が最大でも300ということにも関連して、「伝聞情報で人を評価するジレンマ」として、「大きな組織では、伝聞情報が中心になる」・・・つまりは、「評判」である個人の人事が左右される可能性(恐ろしさ)にもふれています。
「出世」するには、何よりもまず「人に嫌われない」ことが肝要なのだとしみじみ思いました。
他にも、「人事部員が見た出世の構造」として1章分費やしてどんな人が出世するのか等について書かれています。
ところで、新書は沢山出ているのでキャッチーなタイトルで目を引く必要があるのか、タイトルと中身があまり一致していないのでは・・・というものもありますね。
例えば、

出世するなら会社法 (光文社新書 524)

出世するなら会社法 (光文社新書 524)

確かに、会社の中で「出世」するには会社とはどんな存在か知るのはいいことだと思うのですが、「出世するなら」とついている割には迂遠ではありませんか?と思いました。まあ、「会社法って何それおいしいの?」的な人(=ちょっと前のlionus)には、会社法の入門書として読める本だと思います。
「出世するなら」というフレーズは、この『人事部は見ている。』にこそつければよかったのかもしれません*1

*1:ただしこの『人事部は見ている。』の著者は、会社内で「出世」することが必ずしも人生第一の目標ではないでしょ、的な考えだと思います。