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セルフ・ガバナンスの経営倫理(経営学からの経営倫理ガチ研究書。)

セルフ・ガバナンスの経営倫理

セルフ・ガバナンスの経営倫理

8月10日の記事でふれた,
コンプライアンスと企業文化を機軸としたやわらかい内部統制

コンプライアンスと企業文化を機軸としたやわらかい内部統制

この本の著者のひとりである先生が書かれたので,読んでみました。
上=経営トップからの押しつけではなく,従業員の心情を考慮しながらのボトムアップのアプローチで経営倫理(コンプライアンス)を企業文化の中に浸透・定着させるという方向性は2冊とも共通していました。
今日読んだ本は経営学を中心に広範な文献を参考文献にしているガチの研究書で,経営倫理研究の流れもまとめられているし,当然,関連文献への芋掘り元にもなる手ごたえ十分な本でした。
ドラッカーの『新しい社会と新しい経営』から引用しつつ書いてあるところは,これは!という感じで,テンション上がりましたが,今度はこのドラッカー本も読まねばならないのねとうれしい悲鳴だったりして。

p.231
そもそも企業体は自律的制度が基本であり、企業の力や機能は、出資者である株主、マネジメント機能を有する経営者など、限られた一部のステークホルダーの意図・目的などに由来するのではなく、また法律や政治など社会的機構や組織などから全面的に委ねられているものでもない。

pp.231-232
企業は企業自身の理念や長年の蓄積から築き上げられた暗黙知としての企業「文化」を持ち、企業自身が決めた規則という形式知としての「ルール」に従うものであり、その意味から企業はセルフ・ガバナンスを基本とした「自律的組織」であるということができる。

p.232
その場合には、企業がめざす価値と社会がめざす信条や価値の間にギャップがあってはならない。企業体が充足させている信条と価値が、社会の公言している信条と価値に矛盾する場合には産業社会は存続しえないのであり、言葉を変えれば、企業の持続的成長には、企業を取り巻くステークホルダーとの間で「信条と価値」の共有を通じた、産業社会の存続と発展が前提となるのである。