lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

コンプライアンス革命―コンプライアンス=法令遵守が招いた企業の危機/「法令遵守」が日本を滅ぼす/組織の思考が止まるとき‐「法令遵守」から「ルールの創造」へ/第三者委員会は企業を変えられるか 九州電力「やらせメール」問題の深層(郷原信郎先生のコンプライアンス本4冊。)

大体20年くら遡ればいいやと古い時代から進めてきた、コンプライアンス付け焼刃のための乱読も、その半分を過ぎ最近のものに近づいてきました。

コンプライアンス分野では有名な郷原先生の、コンプライアンス関係では(多分)初めてと思われる本書までたどり着きました。
コンプライアンス=(単なる)法令遵守ではなく、社会的要請に適応すること、そしてそれを実現するための「フルセット・コンプライアンス」の考え方など、一連の著書で繰り返し主張されていることの原型が本書にはあります。
また、日米の組織内違法行為の違いをそれぞれ、「カビ」と「ムシ」に喩えた説明も載っています。郷原先生はこのような「例え話」が非常に巧みだと思います。
「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書)

「法令遵守」が日本を滅ぼす (新潮新書)

従来日本では法令そのものというよりも、法令によって与えられた許認可などの権限を背景にして官庁が企業活動や経済活動をコントロールしてきたが、近年の規制緩和の流れで、事前にあれこれ規制しないけれども、何かあったら厳しく取り締まるからねということになり・・・等々、日本社会での法律の使われ方という面からコンプライアンスを考えているところが本書の特徴であると思いました。検察官が証拠のFDを改竄したことで知られる郵便不正事件をめぐる検察の不祥事について、コンプライアンスとの関係で書かれた本です。
「社会的要請への適応」としてコンプライアンスを捉える際のキーワードとして「社会の要請に対する鋭敏さ(センシティビティー)」と「社会の要請に対してセンシティブな人や組織がお互いに力を合わせること(コラボレーション)」の2つが挙げられているのは本書で新しく出てきた点です。
その「センシティビティー」と「コラボレーション」を通じて、副題にもある「ルールの創造」=「ルールを作る」「ルールを活かす」「ルールを改める」というアプローチをとることができる、と読めました。
第三者委員会は企業を変えられるか ?九州電力「やらせメール」問題の深層?

第三者委員会は企業を変えられるか ?九州電力「やらせメール」問題の深層?

三者委員会の委員長としての立場から、九州電力「やらせメール」問題について書かれています。
不祥事の原因の調査・分析と再発防止策の提案をするという点で、第三者委員会は確かに役に立つはずであるが、それを生かすも殺すも企業の経営陣次第*1というのが問題だ、と読みました。

*1:九電は第三者委員会の報告書の都合のいいところだけ「つまみ食い」して経産省に最終報告書を出す等、「(問題の)本質に目を向けないでつまみ食いばかりを繰り返している」と痛烈に批判しています。何度も「つまみ食い」という言葉が出てくるので、九電=頭の黒いネズミ(lionusが小さい頃、つまみ食いをしたら「頭の黒いネズミがちょろちょろして!」と軽く叱られた)という連想が頭から離れなくなってしまいましたw