lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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多元化する「能力」と日本社会 ―ハイパー・メリトクラシー化のなかで 日本の〈現代〉13(ハイパー・メリトクラシーの本でかーら先生を思い出す。)

wikipedia:ハイパー・メリトクラシー
本書で提唱されている「ハイパー・メリトクラシー」という概念は、そもそも概念として立たせるだけの妥当性があるものか、については意見が分かれるところだと思います。
しかし、ともかくも頑張って勉強すればいい大学に入れていい企業に入れて幸せになれるよという素朴な将来方針が危うくなってきたぞどうするよこれは、という気分を表現するにはそこそこ成功しているとも思いました。
実証研究としては、一例として、重回帰分析で有意とされた変数のうち特定のものを、さらに別扱いして層別に比率を出し、

その比率の多少の差が、重回帰分析においては変数間の関連性として表れているにすぎないのである。

と、そもそもの重回帰分析の結果を否定しているところがある*1など、突っ込みどころというかずっこけどころが随所にあります。
何となく著者ご本人も自信がないのだろうな(というか、突っ込みどころ満載だと思うけれどもでも述べるわという旨の記述がある)ということはひしひしと感じられる一冊でしたが、「<第5章>女性たちの選択−自分が戦うか、子どもに戦わせるか−」では一転して生き生きととんがった筆致で、読むべきところはあると思います。
まあなんと言いますか、一読して先日見かけたあるツイートを思い出しました。

勉強はがんばるだけで成績が伸びるから楽って、6年生の娘がしみじみいうてた。そろそろ恋とかしてるんやろかな。

https://twitter.com/as_expected/status/331787258606792704

そしてかーら先生のマンガに出てくる主人公たちも。

*1:なぜ否定するかというと、その変数が独立変数として有意であることは本書での「持論(あえて仮説と言わない)」に一致しないから;一方、同時に有意であった「持論」を支持する変数についてはそのまま肯定されている。