なぜヤギは、車好きなのか? 鳥取環境大学のヤギの動物行動学(鳥取環境大学ヤギ部のおはなし。)
- 作者: 小林朋道
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2012/05/08
- メディア: 単行本
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「動物が、人間の、何かを見つめる姿勢に反応して、その動物自身も、その人間と同じほうを見つめる」という体験をシマリスとヤギで経験されたことが書かれているのは、動物も共同注意があるのかと興味深かったです。
ヒトにおける共同注意と全く同じではないかもしれませんが、姿勢というか見ている方=視線を追従できるという点ではヒトと同じと言っていいでしょう。
このことは、動物から見た人間は、単なる”環境”ではなく、自分と同じく生命をもつ個体として認識されていることを示しているのではないでしょうか。
もうひとつ、大学の近くの幼稚園から園児にヤギを見せてやりたいという依頼にこたえたときのエピソードも印象に残りました。
かいつまんでいえば、園児がヤギの”ヤギコ”と柵越しに対面し、さわろうと手をのばしかけたところ、ヤギコは「頭を下げたかと思うと、ブーンと角もろとも頭を上に突きあげ」、園児はビビッてしまいました(これは先生の予想通り;ヤギは家畜ながら野性味を大いに残している動物。)。そこで先生は園児にヤギコの”気持ち”を慮れるような語りかけをし、ヤギコの警戒心を解くにはどうしたらいいか考えさせて、それを実行させて、ヤギコとの”触れ合い”につなげていったということです。
p.190-191
私は、園児たちに、あることを感じてほしいと思ったのである。
それは、他でもない。「ヤギコも、自分たちと同じ”気持ち”をもった生き物である」ということだ。そしてもう一つ、「ヤギの動物としての”習性”」である。
p.191
最近は、かわいい動物がブームで、子どもにも大人にも大人気である。
p.192
子ども期は、心の一番の形成期でもある。私が気にかかるのは、動物のかわいらしさに対する自分の欲求を一方的に満たそうとする心理が、対人心理も含めた心の形成に及ぼす影響である。
p.193
しかし、園児たちが相対したのは、他ならぬ、われらが女王ヤギコである。ヤギコは、子どもたちのわがままを認めなかった。堂々と、自分の気持ちを子どもたちに示したのである。
p.193
そこで園児たちは、強烈な印象とともに、「相手は、自分たちの自由になるぬいぐるみではなく、はっきりとした意志をもった存在である」ことに気づいたのではないだろうか。
もちろん、それだけで終わっては寂しい。そのあとに続く、相手を思いやった上での友好的な触れ合いも、とても大切である。
p.193
さらに、私は、園児たちに、単に、ヤギを自分たちと同じ人間のように思わせたくはなかった。
p.193-194
人間は、他の生物について、その生物特有の環境に適応した習性とともに、心理を思いやらなければならない。というか、本来、健康に成長した人間の脳には、そういう性質が備わっている、というのが、私の”人間動物行動学の研究成果から導き出されたもの”なのだ。
「情操教育」のため動物を飼う、ということにはこのようなことがベースにある、あるいはなくてはいけないと感じました。