lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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それでもイギリス人は犬が好き―女王陛下からならず者まで(大学図書館の特設コーナーで呼ばれた気がした。)

それでもイギリス人は犬が好き―女王陛下からならず者まで

それでもイギリス人は犬が好き―女王陛下からならず者まで

非常に面白かったです。著者の先生はイギリス文学、イギリス文化が専門のようですが、豊かな学識の裏付けが感じられる濃密な一冊でした。
単にイギリス人の「犬好き」が論じられているのではなく、イギリスの「犬文化」には階級社会が色濃く反映されているという切り口が非常に興味深く読めました。

1835年に動物虐待法が成立し、主に民衆娯楽として人気のあった牛攻めやドッグ・ファイティング、闘鶏などのアニマル・スポーツが禁止されたにもかかわらず、支配階級のスポーツであったコーシングとフォックス・ハンティングは禁止されずに、温存された。イギリスが階級社会であることを露呈する、ダブル・スタンダードの最たる例である。

また近年は、フォックス・ハンティングに対する賛否は、動物愛護や環境保護の意識の高い都市のインテリ層と、野外スポーツを楽しみ、古き良きイギリスの田園生活に郷愁をもつ保守層の対立という様相を帯び、労働党と保守党の間で政治問題化していた。

しかしながら、タイトル通り、イギリス人は階級を問わず「犬が好き」であること、そして、イギリスは確かに動物愛護の国であることを強調して締めくくられていたのも印象的でした。

しかし、犬とともに暮す炉端の安らぎをひとりよがりのものにしないためには、人間の身勝手が犬と犬文化にもたらした矛盾は解決されねばならない。その成否は分からないが、イギリスはその取り組みにおいて先進しており、その意味では確かに、イギリスは動物愛護の国である。