lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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震災と情報(体はひとつなので全方向を一度には見られない。)

震災と情報――あのとき何が伝わったか (岩波新書)

震災と情報――あのとき何が伝わったか (岩波新書)

情報学を専門とする著者が,

東日本大震災の膨大な出来事の中から,一時間,二四時間,一週間,一ヶ月,六ヶ月というおよその単位で基本的な流れを再構成してみる。その中で発生した情報空白状況を検証する。私たちに,この情報空白を乗り切る方法はあったのだろうか。将来,地震津波や大事故が起こって情報空白が生じた場合に,私たちはどのようにしてそれを乗り切ればよいのだろうか。

ということを目標に書かれた本です。
上で出てくる「情報空白」とは,今回の大震災について二種類のものが発生していると指摘しています。

  • 通信システムの破壊,停電,高負荷,接続規制などにより,人々が相互連絡や警報受信を行うことが難しくなった情報空白。
  • 大手メディアが一種類の公式発表のみを大量に伝えることによって生じる情報空白。

本書では,時系列に出来事を並べていきつつ,特に後者の情報空白について淡々と示されているのが非常に読み応えありました。
lionusも,当時テレビやネットにかじりついていたのにも関わらず,結局は後者の情報空白にはまっていたなと実感しました。
阪神淡路の時は,被災地外の人間の方がマスコミが伝える情報により,(災害発生後しばらくは)被災地の人間よりも状況を把握していたという,いわば上記前者の型の「情報空白」が生じていたと思います。
しかし,今回の震災では,「放射能」という人間の五感では感知できないものが問題のひとつになっていたため,素人には何が起こっているのか皆目分からず,マスメディア報道を注視するしかなかったということが,阪神淡路と大きく違っていた点だと思います。阪神淡路では,高速道路が横倒しになっている映像など,何が起こっているのか一目瞭然でした。
さて,本書では今回発生したような「情報空白」を避けるためにはどうしたらよいのか,ということはlionusの読んだところ,結局よく分かりませんでした。
上記後者の「情報空白」を避けるためには,マスコミが伝える公式発表だけに頼らず,自分でインターネットを駆使して多角的に情報を集めることだ,と著者は示唆されておられると読めるのですが,フツーの人(特に社会人)に,それは果たして可能だろうか?と思うのです。
フツーの社会人は情報を探索する時間も,そしてその内容を吟味する知識も,十分持っていません。
もし可能性があるとすれば,こいつはホントに信用できるのかしらんと,立体的に検討できる洞察力を持つことなのかもしれませんが,だからどうすればいいのという感じです。
もやもやもや。