lionusの日記(旧はてなダイアリー)

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第4回情報通信文明史研究会。

先日,情報通信学会の情報通信文明史研究会「第4回情報通信文明史研究会『情報通信の言葉を巡って』を聴講してきました。

  • 『伝から電へ ― 近代通信の用語の定着の一断面 ― 』新井 菜穂子氏(国際日本文化研究センター 准教授):「伝信 」から「電信」に用語が統一,定着していった過程を国語学的視点から丁寧に解説されておられました。また,フランクリンにより雷が電気現象であること,つまり自然現象である雷と摩擦電気など人間が発生させたものが同じものであることが科学的に証明されたことをベースに,文明開化後の日本人においては「『電気』は天空の雷電と同じ性質」を持つものとしてとらえられており,「不思議な魔力を持つ技術としての恐怖と期待の対象であった」と述べられていました。元来雷、稲妻の神様である電電宮が,現在なぜ電気・電波のまもり神なのか,よおく納得できたような気がして嬉しかったです。
  • 『情報という言葉の初出と、その一般化 ― 明治期の情報 ― 』小野 厚夫氏(神戸大学 名誉教授) :非常に面白かったです。従来から,「情報」という言葉の初出や,意味するところについて気になっていたのですが,従来よく言われていた「『情報』という言葉は森鴎外の造語である」という説はあたっていないことを知り大満足でした。では,「情報」という語の初出は何かというと,明治9年(1876年)に出版された,酒井忠恕訳『沸國歩兵陣中要務實地演習軌典』だそうです。東京の国会図書館などへ何度も足を運び,古い古い文献を丹念に調査されたご研究で,大変貴重なものであると思いました。

小野先生の今回のご発表については,情報処理学会誌「情報処理」や神戸大学教養部紀要「論集」に掲載された論文でも知ることができます。以下,「情報処理」掲載論文はciniiへのリンクを貼っておきます。論文本文は以下リンクからPDFで読めます。
創立45周年記念特別寄稿 : 情報という言葉を尋ねて(1)
情報という言葉を尋ねて(2)(創立45周年記念特別寄稿)
創立45周年記念特別寄稿 : 情報という言葉を尋ねて(3)
神戸大学教養部紀要掲載論文は,退官後も残っているページから読めます。
情報という言葉の歴史。