lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

学生諸君には強烈な印象。

lionus2008-12-09

今後の授業で,
BSドキュメンタリー 壊れゆく家族〜イラクから帰った女性兵士〜
にっぽん 家族の肖像 第4集 明日への いのち〜12年目の震災遺児〜
この2つのビデオを題材として扱いたいと思ったのですが,その前提としてPTSDの知識が必要だと思ったので,科目内容には必ずしも直結しないのですが,
NHKスペシャル 戦場 心の傷(1)兵士はどう戦わされてきたか
を,まず授業で視聴してもらいました。
写真は,当該ビデオ中で出てきた用語の抜き書きです。
メインは,イラク戦争による米兵の「心の傷」とそれによるPTSD発症や帰還後の社会不適応の問題ですので,戦闘シーンがバリバリ出てきます。それだけでなく,「ふつう」の若者を(人殺しをする)兵士に仕立て上げるブートキャンプ(新兵訓練)の映像もかなり強烈で,”kill, kill”と繰り返しながら敵に見立てた目標を攻撃する訓練生の様子は,学生諸君には結構ショッキングだった模様です。
個人的には,この番組のキモのひとつは,最近のイラク帰還兵の実際が描写されているだけではなく,

20世紀の戦争史をひもときながら、「兵士の心が壊れる」というもうひとつの悲劇を描く。

第一次世界大戦時の「シェル・ショック」,日中戦争時の「戦争神経症」,そして1980年のDSM-IIIにPTSDが診断名として採用される背景となったベトナム帰還兵の問題について,当時の貴重な映像や資料を交えて概説されているところだと思っています。

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PTSD,トラウマによる精神障害は,一般の人にも非常に理解されやすい一方,拡大解釈されやすい危険性もはらんでいます。
トラウマという用語が,日常生活の範囲でも経験されるちょっとした心の傷つきまでに拡げられることがないとも限らないからです。
何でもかんでもトラウマとすると,収拾がつかなくなります。
何がトラウマか,ということは,受け取る側の主観に依存するところ大だからです。
学生諸君におけるPTSD概念の拡散は極力避けたかったので,戦争と兵士の「心の傷」という,現代の日本人の若者にとっては非常に極端に思えるのではないかというところから,説明をしてみた次第です。
lionusの意図はどの程度伝わったかは,確証はないのですが,ともかくもPTSDとはとんでもなく圧倒的なストレッサーによるものであることは分かってもらえたのではないかな,と思っています。