lionusの日記(旧はてなダイアリー)

「lionusの日記」http://d.hatena.ne.jp/lionus/としてかつてはてなダイアリーにあった記事を移転したものです。

ひとつ間違うと強烈な厭味に通ず。

恵まれた環境に生まれたからにはやらなければならない義務がある(インターネットのお仕事人辞典,キャリナビ)
学生記者が社会人の方に取材している記事で,全体としては非常に興味深いです。

これからの時代は「知識社会」が到来すると言われますが、この社会には、大いなる逆説があります。多くの人々が、知識社会とは「知識が価値を持つ社会」であると考えていますが、実は、知識社会とは「知識が価値を失っていく社会」です。なぜなら、これからの時代には、一生懸命に専門知識を勉強しても、それはすぐに陳腐化してしまうからです。

知識社会においては、誰でも容易に知識を手に入れることができるようになります。例えば、ウェブサイトで検索すれば、容易に最先端の知識にアクセスでき、簡単に大量のプリントアウトが得られる。

これからの時代、皆さんの職業人生にとって重要になるのは「専門的な知識」ではありません。「職業的な智恵」です。言葉で表せる「知識」ではなく、言葉で表せない「智恵」なのです。では、「職業的な智恵」とは何か。それは、スキルやセンス、テクニックやノウハウと呼ばれているものです。また、最近、書店で本のタイトルにしばしば見かける、企画力、営業力、会議力などと呼ばれるものも、まさに職業的な智恵です。

今日,クローズアップ現代で「富士山をどう動かしますか?〜 “地頭力”(じあたまりょく)の時代〜」という番組で取り上げられていた”地頭力”というのとほぼ同等のことを指しているのだと思いました。
番組のコメンテータには糸井重里氏が来られていたのですが,企業が”地頭力”を持つ人材を求め,従来にはなかったような”奇抜”な就職試験問題を出すことは「企業の悲鳴が聞こえるようだ」と言い,しかしながら「どうやって”地頭力”を鍛えることができるんでしょうね(僕には分かんないや;そして出題している側も分かってないんじゃないの)」と宙ぶらりんな感じで終わってしまっていました。*1
さて,上記記事に話を戻すと,その「智恵」を身につけるためにはどうすればよいのか?という学生記者の問いに答えておられます。

我々は、「経験」というものを通じてこそスキルを身につけることができる。「職業的な智恵」というものは、仕事の経験の中でこそ、身につけることができるものなのです。

スキルというと何となく実務に直結したこまごましたものを想起してしまいがちですが,次を読むともっと違ったものを指しておられると理解できます。

しかし、永年の仕事の経験の中から掴み取った「職業的な智恵」は、「専門的な知識」と違って、決して古くならないのです。(中略)永年かけて身につけなければならないが、ひとたび身につければ決して古くならず、どこでも通用する「智恵」こそが、永い職業人生で、自分を支える大きな力となってくれるのです。

lionus的な理解では,他に言い換え可能な表現があるとすれば,移転可能とか,機転が利くとかそういうことかなと思いました。移転可能とは,前職(前分野)での「智恵」のうち利用可能なものを素早く的確に見分けそれを利用したり,その「智恵」を蓄積したノウハウを新たな分野での「智恵」を獲得するために使うとかいうことです。機転が利くというのは,空気(状況)を素早く的確に読み,その時最適な行動をとるということです。う〜んでも,こちらはまっさらな新人でも発揮できる人には発揮できるものなので,上記の「智恵」とは違うかもしれない・・・
とか思っていたら,次のような記述が。

これからの時代、「考える力」よりも大切なのは「感じる力」です。「感じる力」とは、非常に高度な智恵なのです。

機転が利くというのは,これに近いかもしれないです。
ただし,元々個人が持っていた個性・資質に加え,社会人として経験を積むうち,「神は細部に宿る」ではないですが,些細に思えることにも重要な意味があるとか,細やかな気遣いとか気配り,アンテナの感度を高めておくことの大切さを実感し,実践できるようになるということもあるのだと思いました。
他にも,学生記者相手ということを意識されているような内容が続くのですが,次のエピソードは,受け取る人にとっては印象が様々になってしまいそうな”危うさ”があるなと感じました。
引用すると長くなるので,記事ページインデックスから「6.いま、この瞬間を生き切る」のページの真ん中辺り(写真が挿入されている辺り)をご覧ください。*2
心理屋としては,つい「社会的比較」を想起してしまうわけですが。
ひねくれ心理屋lionusでした。

*1:別に糸井氏がコメンテータとしてけしからんとかネガティブにとらえている訳ではありません。lionusもただその通りだと思う次第です。

*2:直接リンクを張りたかったのですが,うまく出来ませんでした。すみません。